あああ

第5章:鋼鉄の墓標と白き守護者

1. 絶望の地、エリアG-16

かつて文明の粋を集めた実験都市エリアG-16は、今や暴走した機械兵器が徘徊する「鉄の墓場」と化していた。重苦しい曇天の下、錆びついた高層ビルの間を、二人の少女が進む。

100年の眠りから覚めた元アイドル、ねね。そして、フォレスタの守り神である猫耳の少女、エイミー

ねねの左足——ノックス博士によって取り付けられた機械の義足が、時折、鈍い磁気音を立てる。その中には、このエリアを統べる自律型G級要塞兵器**「デスサイト」**を制御するためのマスターキーが秘められていた。

「……ねね、気をつけて。この場所の空気には、鉄の錆と、消えない悲しみの匂いが混ざっています」

エイミーは静かに告げる。彼女は守護神である「猫神」をフォレスタに置いてきており、その力は本来の半分も出せない。それでも彼女がここに同行したのは、ねねという人間を見極めるためだった。

2. 蘇る「悲しみの記憶」

エリアの中央部へ近づくにつれ、エイミーの足取りが重くなる。彼女にとってここは、最愛の「父」を失った場所だった。

かつて、森に捨てられた赤子だったエイミーを育てたのは、一匹の雄猫だった。種族を超えた深い愛情に包まれて育った彼女だったが、ある日、迷い込んだこのエリアGで無慈悲な機械軍団の襲撃に遭う。猫は己の命を賭してエイミーを守り抜き、その魂は少女と融合した。

溢れ出した慟哭と悲しみは巨大なエネルギーへと昇華され、彼女をフォレスタの守り神へと押し上げたのだ。

「あの日、私を守ってくれた温もりは、この冷たい鋼鉄に握りつぶされました……。ねね、あなたはこの地を、本当に元の姿に戻せるのですか?」

エイミーの問いに、ねねは歩みを止めず、力強く頷く。

「……うん。私、100年前にみんなを騙すための『罠』にされた。でもね、今は違う。この足にあるキーは、壊すためじゃなく、止めるためにあるんだと思う。エイミーちゃんの悲しみを、これ以上増やしたくないから」

3. 要塞兵器デスサイト、降臨

エリアの最深部、巨大なドーム状の建造物が地響きと共に変形を始める。エリアG-16の心臓部にして、絶対的な排除システム——要塞兵器デスサイトが、侵入者を感知し起動したのだ。

無数のガトリング砲と、文字通り死神の鎌(デスサイト)を思わせる巨大なブレードが展開される。暴走状態にあるデスサイトには、対話の余地はない。

「一度、あの動きを完全に止めないと……内部のコンソールにアクセスできない。マスターキーを認識させる隙を作らなきゃ」

ねねが義足を一歩踏み出す。義足に埋め込まれたマスターキーが、主の帰還を察知したかのように淡い光を放ち始めた。

4. 決意の共闘

エイミーは、ねねの瞳に宿る純粋な意志を見た。それは、かつて自分を守って死んだ猫の眼差しに似ていた。

「……分かりました。私の力は完全ではありません。ですが、猫神様が私に託したこの命、あなたの『希望』のために少しだけ預けましょう」

エイミーの背後に、幻影のような白い猫の尾が揺れる。悲しみを怒りに変えるのではなく、誰かを守るための力へ。

二人の前で、デスサイトの巨大な鎌が振り上げられた。

心を持たない機械の要塞。100年の時を超えたアイドル。そして、悲しみを背負った神の少女。

エリアG-16を包む「再起動(リブート)」の物語が、今、幕を開ける。