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第5章-7 インサイドG16
デスサイトの巨躯(きょく)に飲み込まれたねねを待っていたのは、無機質な歯車と、脈動する赤いケーブルが網の目のように張り巡らされた、巨大な「胎内」だった。
「ハァ……ハァ……エイミー、無事でいて……!」
背後で聞こえた爆発音が耳から離れない。エイミーが自らを犠牲にして作ってくれた、たった一度きりのチャンス。ねねは涙を拭い、ノックスから託された端末を握りしめた。
画面には、ノックスが一生をかけて解析した、迷宮のようなデスサイト内部の最短ルートが映し出されている。
「……こっちだ」
ねねは走り出した。 周囲の防衛システムがねねを排除しようと、通路の壁から鋭い針を突き出し、放電を浴びせてくる。だが、ねねは止まらない。切り裂かれた服、頬をかすめる火花。痛みさえも、今はエイミーへの祈りに変えて、ひたすら深部へと突き進む。
進むにつれ、周囲の様子が変わり始めた。 それまでの殺伐とした戦闘機械の内部とは思えないほど、通路は清潔になり、壁の材質も柔らかい色調へと変化していく。そして何より、聞こえてくる駆動音が、どこか「心臓の鼓動」のように優しく、規則正しく響き始めた。
(……何、ここ。怖い感じがしない……)
ノックスの解析ルートが示す終着点。 そこには、重厚な装甲に守られた、この殺戮兵器の「心臓部」と思われる場所があった。
しかし、そこに立ちはだかっていたのは、巨大な動力炉でも、冷たいメインコンピュータでもなかった。
「……扉……?」
それは、鋼鉄の要塞の中にはおよそ不釣り合いな、白く塗られた、どこか温かみのある木製風の扉だった。
扉の横には、小さなスロットが一つ。 ねねは震える手で、首から下げていたマスターキーを手に取った。ノックスが「桃色の髪と緑の瞳の少女」に渡せと命じられた、唯一の鍵。
「お父さん……もし、あなたがここにいるなら……教えて。エリアG-16の、本当の答えを」
ねねは意を決し、スロットにマスターキーを差し込んだ。 カチリ、と小さな音が響き、100年の封印が解かれる。
扉が、ゆっくりと、光溢れる向こう側へと開いていった。
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