第5章-1 禁断の地 エリアG-16

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第5章-1 禁断の地 エリアG-16

薄暗い工房の隅で、古びたホログラムがパチパチと音を立てながら、禁断の地の地図を映し出していた。

「いいかい、ねね……エリアG-16を支配しているのはただの機械ではないんだ」

ノックス博士は、震える手でホログラムで映し出されたエリアG-16を指さした。その先には、鉄の壁に囲まれ、今なお蒸気と駆動音を上げ続ける巨大な監獄のようなエリアがある。

「100年前、一人の狂った科学者がいた。彼は発明の欲に溺れ機械兵器を暴走させ、誰も足を踏み入れることのできない『拒絶の領域』を作り上げた。それがエリアG-16の始まりだ。彼は、その狂気の軍団に唯一命令を下せる権限――『マスターキー』を、一体の機械兵の胸の奥深くに埋め込んで隠したのだよ」

ノックスは深く、重いため息をついた。その瞳には、彼が費やしてきた膨大な年月が刻まれている。

「私がまだ若かったころ、大切な人が機械達に襲われてね……私は生涯をかけて、その機械兵を……マスターキーを捜し求めてきた。5年前に見つかり、そしてようやく解析に成功したのだ。だが、キーに刻まれていたのは、軍事的なコードでも何でもない、奇妙な『伝言』だった」

ノックスが操作すると、モニターに古い文字が浮かび上がる。 『Gの継承 – この鍵を桃色の髪と緑色の瞳を持つ少女に渡せ』

「言われるままにずっと探していた。そして、私は君に出会ったんだ。ねね、君に。これが正しい決断かは解らない。ただ私に残された時間も少ないからね」

ねねは、自分の桃色の髪を一房手に取り、鏡に映る新緑のような瞳を見つめた。なぜ自分なのか、その理由はわからない。けれど、ノックス博士の真っすぐな瞳に親しみを感じた。

ねねの記憶の底にある父もまた、科学者のような仕事をしていた。周囲からは理解されないこともあったが、娘であるねねに向ける瞳は、いつも驚くほど優しかった。ノックスの技術への情熱、そしてどこか悲しげな横顔が、記憶の中の父と重なり、ねねの心を動かした。

「ノックスさん……その科学者が暴走させた機械達、私は正しい方向に使いたい。放置された力はただの凶器だけど、誰かを救うための力に変えられるはずだから」

ねねの言葉に、ノックスは目を見開いた。

現在、世界は「覚醒大戦」という出口の見えない戦火に包まれている。エリアG-16に眠る圧倒的な戦力があれば、この不毛な争いを終わらせることができるかもしれない。

そして何より、ねねには譲れない想いがあった。 この戦争を終わらせれば、離ればなれになっている親友のリリを救い出せる。そして、憧れていた英雄・オリジンを闇から目覚めさせられるかもしれない。

「私、行きます。エリアG-16へ」

ねねは、ノックスから重みのあるマスターキーを受け取った。冷たい金属の感触とは裏腹に、それは彼女にとって、希望への熱い切符のように感じられた。

桃色の髪をなびかせ、緑の瞳に強い決意を宿した少女の旅が、今、幕を開ける。

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