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第5章-2 歯車の入り口
ノックスの工房を後にしたねねの目の前に、巨大な鉄の門がそびえ立っていた。かつて「科学者の楽園」と呼ばれたはずのエリアG-16は、今や厚い錆(さび)と、寄せ付ける者を拒むような冷たい蒸気に覆われている。

「ここが……G-16……」

ねねが境界線に一歩踏み出そうとした、その時だった。
「待つのです。その先は危ないのです」

背後からかけられた涼やかな声に、ねねは思わず肩を跳ねさせた。振り返ると、そこには不思議な雰囲気を持った少女が立っていた。淡い光を放つような装束を纏い、その瞳にはどこかすべてを見透かしているような静かな知性が宿っている。

「私はエイミー。あなたが託された『鍵』の重さを知っている者なのです」
「そのオーラ、まさかフォレスタのエイミー……? どうして私のことを……」
「話は後。今はここを抜けるのが先決。一人で行くには、この場所はあまりに危険なのです」
エリアG-16の監視体制は、想像を絶するものだった。空を舞うクラゲや魚のような監視ドローン、地を徘徊する巨大な鉄の塊のような兵士、そして数秒おきに辺りをなめ回す赤外線のサーチライト。



「……息を止めて、私の後ろに隠れて」

ねねの合図とともに、二人は巨大な配管の影から影へと滑り込む。エイミーが何かを唱えかすかに光り輝くと、激しく回転していた監視カメラが動きを止めた。エイミーは何事もなかったように進み始める。ねねも付いていき要塞の奥深くへと歩を進める。
「すごい……まるで、機械たちがあなたに道を譲っているみたい」

ねねの呟きに、エイミーは少しだけ悲しげな微笑を浮かべた。

「あの子たちは今では何を守っているのかも解らないのです…」

激しい警戒網をくぐり抜け、二人はようやくエリアG-16内部へと繋がる巨大なダクトの入り口に辿り着いた。そこは、外の世界とは隔離された、歯車と蒸気が支配する鋼鉄の迷宮。一息ついたねねはエイミーに語り掛ける。

「どうして私を助けてくれるの?」
ねねの問いに、エイミーは真っ直ぐに彼女の緑の瞳を見つめ返した。
「あなたが、この止まった時計の針を動かしてくれると信じているのです。……行くのです、ねね。ここから先は、もう隠れて進むだけでは済まない」

こうして、心強い、けれどどこか謎めいた仲間・エイミーを加え、ねねは狂気と愛情が入り混じるエリアG-16の深部へと足を踏み入れていった。
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