第5章-3 闇から見つめる者

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第5章-3 闇から見つめる者

機械の国、エリアG-16の奥深くへと足を踏み入れたねねとエイミー。 遠くには無数の時計が組み込まれた巨大な要塞がそびえ、周囲には重厚な装甲を持つ兵士たちが徘徊している。奥へ進むほどに、機械生物たちはその規模と強靭さを増していた。

張り詰めた空気の中、ピンク色の髪を揺らしながら進むねねは、ふと背筋を刺すような視線を感じた。

建物の暗い影へと目を向けると、顔が「時計の盤面」になった異形の梟(ふくろう)がこちらをじっと見下ろしている。

「しまった、見つかったわ!」

ねねの言葉に、白いワンピース姿のエイミーもピンと猫耳をそばだてて身構える。 梟の目が妖しく輝くと、周囲に謎の黄色いく光る立方体が無数に浮遊し始め、二人を完全に包囲した。

機械の梟が軋むような声で告げる。 『ヒトリ・エラベ』 言葉の意味を図りかねるねねに、梟はさらに重ねた。 『ヒトリダケ・イキル・ヒトリ・エラベ』

一人だけ生き残らせ、もう一人の命を捧げろ。極限状態の思考を試すような選択を迫る。極限の質問で人の思考を観察しているようだ。 しかし、二人に迷いはなかった。目を合わせて力強く頷いた瞬間、エイミーが全身から眩い光のオーラを放ち、周囲を飛び交う立方体の動きを完全に封じ込める。

その隙に、ねねは梟の目の前へと鋭く踏み込んでいた。 「ちょっとお仕置きよ」 空中に小さな魔法陣を描くと、そこから巨大な悪魔の腕が突き出し、機械の梟を容赦なく握り潰す。

——しかし次の瞬間、ねねとエイミーは「攻撃を仕掛ける前の位置」に戻っていた。 粉々に砕けたはずの梟は無傷で首を傾げ、その顔の時計の針がありえない速度で『逆回転』している。 『エラバナイ・ダレモイキナイ』

「ねねが踏み込んだ足跡が消えてる。あなたの攻撃だけじゃない……『時』が巻き戻ってるんです!」 エイミーの言う通り、梟の前にはねねの攻撃を察知した防御の壁が先回りして展開されていた。

「長期戦で体力切れを狙っているようね。そうはさせないわ…!」 ねねは不敵に笑うと、床にさらに大きな魔法陣を出現させる。そこから圧倒的な威圧感を纏う巨大な魔神が姿を現した。 「召喚せし魔の神よ、如何なるスキルも無効にせよ!」

魔神が頷いた刹那、時間を操る能力を強制的に封じられ、立方体たちの攻撃的な光が消え失せる。焦って羽をバタつかせる梟の致命的な隙を、ねねは見逃さない。 鋭い蹴りが梟の顔面を捉え、弾け飛んだ梟は地面に転がり沈黙した。勝敗が付いたことを確認した魔神は空間に溶け込み消えた。

「やったね……」 エイミーが安堵しかけた瞬間、ねねの周囲に無数の剣が召喚され、動かなくなった梟を次々と貫き、完全に破壊し尽くした。

「こ、これ以上、壊してはいけません!! この子達も生きているのです!」 焦った声を上げるエイミーに、ねねは冷徹な現実を突きつける。 「解るよ……でもね、甘い考えでは勝てないわ」

梟の致命傷を回復させつつ、エイミーは「それでも……」と呟いたが、自分の使命に目を向け前を向いた。 「今は先に進むのです!」

「うん、行こう!」ねねの言葉にお互いの決意の強さを確認した。
しかし、その2人の耳に、今まで遭遇したどの機械とも違う、明らかに異質で重々しい足音が響いてきた。

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