
第二章 カタナの進軍と氷獄の女王
第一節:カタナの軍略
武神の如き威圧感を纏う将軍・怒龍は、北方の凍てつく大地「ゼレウス」を見据え、静かに軍略を練っていた。
隣に座す老仙人・白水が、深い皺の刻まれた瞳を閉じて呟く。「力での制圧は、新たな闇を生むだけにござる……」。

その頃、隠密の命を受けた忍者頭・大和は、紅蓮の炎を纏う狐と化して戦場を舞っていた。だが、彼女の必殺の刃を止めたのは、敵の戦士レオンの悲痛な叫びだった。 「頼む、女王を救いたい……あの氷の天使の呪縛から!」 冷徹に突き放した大和だったが、傷ついた兵を癒す巫女・神楽の祈りと、雷刀を携え沈黙を守る雷道の背中が、彼女の心に「正義の真意」を問いかけていた。
報告を受けた白水は静かに告げる。「その若者の声、あるいは修羅の道を照らす灯火となるやもしれぬ」。

第二節:真の敵
「我らはゼレウスを滅ぼすにあらず。氷の楔から、その魂を解き放つのみ!」 怒龍の号令が戦場に響き渡る。月明かりの下、大和は再びレオンと対峙した。かつての敵と背中を合わせる奇妙な共闘。しかし、救済の光が差そうとした瞬間、天を裂く冷気が彼らを襲う。ゼレアを支配する「氷の天使」が、彼らの意志を断つべく顕現したのだ。
猛吹雪の中、怒龍が戦場の中心へと踏み出す。黄金のオーラが立ち昇り、覚醒した巨大な『武神』の姿に変わっていた。 「雷道、道を切り拓け! 神楽、魂を繋ぎ止めよ!」 雷道の雷刃が暗雲を裂き、神楽の鈴の音が凍てつく呪縛を払う。大和は火狐へと変貌し、レオンと共に氷の深淵へと突撃を開始した。

第三節:氷獄の女王
辿り着いた玉座の間。そこに座す女王ゼレアから放たれるのは、空間さえも砕き散らす絶対零度の絶望だった。 「……救済? 矮小な人間が、神の意志に抗うか」 無機質な声と共に放たれた一撃が、雷道を氷像へと変え、大和の炎を一瞬で掻き消す。仲間の鮮血が白銀の床を赤く染めていく。
その惨状を前に、怒龍は悟った。彼女を救うことは、世界を永遠の冬に沈めることと同義であると。 「白水様……拙者は、将軍としてこの命を断つ」 救済の願いを血の涙と共に捨て、怒龍は刀を抜いた。武士の情を捨て、討伐の鬼へと変わる。黄金の武神が、絶望の玉座へと最後の一歩を踏み出した。

第四節:断絶と誓い
激闘は極限に達し、怒龍とゼレアの「覚醒」が激突する。ゼレアが天を覆う巨大な氷塊を呼び寄せ、カタナの軍勢へと振り下ろした。怒龍はその巨体を盾とし、仲間を守るために無数の傷を負いながらも立ち塞がる。
ゼレアが最後の一撃を放とうとしたその時、彼女の瞳に一瞬、人の輝きが戻った。 「……引きなさい。今ならまだ、仲間を救える」 内側で衝突する天使と人間の心。呻き、苦悶するゼレア。その隙にレオンが雷道を抱え、怒龍のもとへ駆け寄る。
血に染まりながらも、怒龍は女王を真っ直ぐに見据え、地鳴りのような声で言い放った。 「……退くぞ。だがゼレアよ、次は必ず――貴様を撃つ」
北の大地に、武士たちの無念と決意の足跡が刻まれた。

