第5章-5 ギアーズG-8幻想の戦士

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第5章-5 ギアーズG-8幻想の戦士

道中迫り来る無数の機械を払い除けねねとエイミーは先を急いだ。二人の体力は既に限界を迎え辺りは深い夜の闇に包まれていた。 息を整える間もなく闇の奥底から黄金の輝きが立ち上る。

名乗りすらなく構える戦士。

間髪入れずに鋭い光の斬撃が暗闇を切り裂いて飛来した。

「ねね!」

エイミーが最後の力で前に飛び出しねねを庇い斬撃をその身に受ける。

「力が入らな、、い、」

光の刃は容赦なく彼女の体を切り裂いた。1日戦い続け限界まで疲弊しきっていたエイミーは自己修復すら叶わず吹き飛ばされる。

「エイミー!」

ねねは急いで彼女を抱き寄せ近くの建物の影に隠した。

冷たい息を吐きねねは光を放つ存在へと向き直る。 底知れぬ圧倒的な力。ねねの生存本能が一瞬でそれを悟る。

ねねから凄まじい力が溢れ出ていた。もはや友と呼べるエイミーが倒れたことで覚醒していた。

天使と悪魔の幻影が瞬時に背後に召喚される。二つの相反する力がねねの肉体に宿りスピードとパワーを限界突破させた。その気迫はすでに魔神クラスに達していた。

地を蹴る。光の斬撃を紙一重でかわし敵の懐へと潜り込む。渾身の力を込めた超強力な打撃が敵の装甲を捉えた。 鈍い音が響く。

敵は吹き飛ばされ激しく壁に激突した。

「ガガッ!!、、コレハ神の力ヲ、、宿シテイル、、!?、、、神ヲ召喚シテ力ヲ得テイル、、、」

戦士はダメージを即座に自己修復しつつねねを分析する。

その時、空間が捻じ曲がり、光り輝く世界に変わる。これはおそらく敵が作り出した幻想…。

神聖な教会の幻想がねねを包む。そして黄金に輝く戦士はふわりと空中に浮かび上がり優雅な姿勢をとった。

「ワタクシハG-8。貴殿ヲ葬ル者」

冷徹な機械音声が響く。ねねは真っ直ぐにG-8を見据えた。
(この教会、どこか懐かしい…)一瞬昔の記憶がフラッシュバックするが、すぐに戦闘に意識を集中した。

「ギアーズのG-8…どうりで強いわけね。……私はねね。あなた達の主になるために来た」

一瞬時が止まる。静寂の後G-8の声色が禍々しい悪魔のそれに変貌した。

ネネ?

ネネ……ソノ名ヲ語リ……主ヲ語ル偽者……絶対二許サナイ……始末スル」

ただの機械であるはずの存在から激しい怒りが波のように押し寄せてくる。明らかな殺意。ねねはその感情の揺らぎに乗じて踏み込んだ。

次の瞬間再び空間が歪んだ。教会が消え一面の美しい草原へとすり替わる。やはり高度な幻覚だ。

「ワタクシノタイセツナ記憶……汚ス愚カ者」

「来る!」ねねはG-8の攻撃に備える。

G-8の姿がブレて空間に増殖していく。瞬く間に100体を超えるG-8が草原を埋め尽くし一斉にねねへと襲い掛かった。

ねねは歯を食いしばりさらに力を引き出す。迫る光の刃を砕き数十体のG-8を次々と破壊していく。

息が上がり手足が鉛のように重くなる。 このまま押し切れる。そう確信した矢先ねねの体が急激に重力を増し地面に膝をついた。

背後の天使と悪魔が砕け散る。

G-8の攻撃がねねの強化の源の天使と悪魔を破壊したのだ。詠唱が途切れ急激な力の上昇による反動がねねの動きを止める。

機械の軍団がねねを襲う。

ねねもエイミーと共に1日戦い続けて疲弊しきっていて抗う力が残っていなかった。

無数のG-8が一つに融合し1体の機械へと戻る。そして倒れたねねへとどめを刺すためにゆっくり近づいてきた。

全身が痛む。それでもねねはボロボロの体を奮い立たせ、魔力も強化もないただの生身の拳を握り締めG-8へと突き出す。 その拳は空を切りねねの体は限界を迎えた。

力尽きたねねはそのままG-8の冷たい装甲にもたれかかるようにして倒れた。

だが致命の一撃は来なかった。 G-8は動かない。……静止している。

その電子頭脳の中で何かが激しく明滅していた。 ノイズ混じりの記憶。昔ピンク色の髪をした小さな少女が無邪気に自分に抱きついてきたあたたかい記憶。 ねねの柔らかな肌にG-8の冷たい指先が触れる。その生体情報を識別した瞬間G-8の赤いレンズが大きく揺らいだ。

「ネネ……ナノ?……ワタクシハ…ナンテコトヲ……」

装甲が震える。G-8は恐れるようにヨロヨロと後ずさりそのまま深い闇の中へと姿を消していった。 同時に幻覚の世界はガラスのように砕け散る。

後には教会のような古びた機械の建物だけが静かに佇んでいた。

夜が更け、朝がやってきた。

「私たちは倒れていたのに、、、どうして生き残ったのです?」

なぜ自分たちが生き残っているのか不思議に思いつつ、エイミーは前を向くことに決めた。

眩しい朝の光でねねは目を覚ました。 横には静かに微笑むエイミーがいた。深くえぐられていた傷は既に治っている。ねね自身の痛めつけられた体もエイミーの力で完全に回復していた。 ねねは静かに口を開く。

「私にも解らない。でも、私達は生きてる…今はそれを喜ぼう」

「…G-8……思い出せないけど私は彼女を知ってる…あの教会や草原も…」

胸に残るかすかな痛みを誤魔化すようにねねは立ち上がった。

「機械達が静まり返っています。もうデスサイトの近く……準備はいいのです?」

エイミーの問いかけにねねは力強く頷いた。

「うん!おかげで動けるわ!」

朝靄の中そびえ立つ最終目的地。二人は決意を新たにデスサイトの防衛ラインへと静かに潜入していった。

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