
第6章-2 襲撃のダークヒーロー

駆けつけた現場は、すでに黒い煙と瓦礫に覆われていた。
「大丈夫だよ」

崩れた壁の傍らで、怖がる子供が震えている。そして朝アカリに挨拶をしてたあの子供が、より幼い子を守っていた。
彼らを見下ろすように宙に浮いていたのは、不気味な黒いドレスを纏ったアメルダの刺客、黒魔術師アラクネだった。

「私が相手だ!!ノゾミだって戦えるんだ!」
小さな戦士ノゾミが立ち上がる。しかし足は震えていた。

「あーらぁ。……フフッ、随分と可愛らしぃ防衛隊さんねぇ」
そう言うとアラクネは魔界の蜘蛛の糸をまき散らし始めた。

蜘蛛の糸で縛られた塔を振り回すアラクネ。巨大な建造物がノゾミと幼い子供に襲い掛かかった。


ズガガガガガ!!!凄まじい衝撃が空気を震わせる。

「ノゾミちゃん、よく頑張ったね。」
アカリが到着した。

建造物を一刀両断、アカリの動きに合わせて飛び散る破片から子供たちを守るハク。
「相変わらずな馬鹿力だ」

彼らの身体能力は覚醒の力で強化されている。既に戦闘態勢だ。
「ノゾミちゃん、あなたの強い気持ちが私達にこの場所を知らせてくれたの。ありがとう。」
二人の目線は鋭くアラクネを刺す。
「ウフフ、、もう間合いに入ってるわよ」挑発するアラクネ。

アラクネが至近距離で放つ無数の黒い魔力弾。

ハクはダメージを覚悟でそれらを砕く。

「今だ、アカリ!」

ハクが切り開いた道の中心を、アカリが一直線に駆け抜ける。

大地を砕くほどの踏み込みから放たれた渾身の一撃。蜘蛛の糸と斬撃が交差する。

ザン!!!強烈な一撃がアラクネに届く。

防御魔法ごとその体を大きく吹き飛ばした。



阿吽の呼吸。幾度となく死線を潜り抜けてきた二人の見事な連携。
「グハッ!…くっ…動けない………」
「な~んてね」

アラクネはすぐに立ち上がる。強固な蜘蛛の糸でガードしていたのだ。
「……ウフフ、少しは骨があるようねぇ…そうそう…あなたがアカリさんね。あなたに伝言を頼まれましたの」

アラクネの足元に底なしの影が広がり、その体がズブズブと沈み込んでいく。去り際、彼女は残酷な笑みを浮かべて言い放った。

「オリジン様からの伝言よ。『1週間後、お前たちを支配する』」
その名を聞いた瞬間、アカリとハクの動きが凍りついた。
――帝王オリジン。かつてネオライズの民の故郷を焼き尽くした男。

「命を懸けて足掻きなさい…ウフフ…美しいわねぇ」
そう言って闇に消えていくアラクネ。

アラクネが完全に影の中に消え去った後も、不吉な宣告だけが呪いのようにその場に残り続けた。
「……もう大丈夫よ、怖かったわね」

アカリは武器を下ろし、震える子供たちを強く、優しく抱きしめた。その横で、ハクが迅速に傷ついた街の人の救助を始める。
助かった安堵で泣き出す子供たちの頭を撫でながら、アカリの瞳の奥には暗く激しい炎が揺らめいていた。

この地に住むネオライズの民は皆、かつてアメルダ帝国の帝王オリジンによって故郷を理不尽に焼き払われ、家族を奪われた生存者たちなのだ。

絶望の淵から這い上がり、ようやく築き上げた独立国ネオライズに、再びあの悪夢の元凶が手を伸ばそうとしている。
1週間後、本当の地獄が来る。
夕闇に染まる街を見つめながら、アカリは子供たちを抱きしめる腕に、ギリッと強い力を込めた。
