
・前の話
・次の話
第7章-4 四獣「輝く泉の水龍」
翠風の石を手に入れた一行は、さらにフォレスタの奥へと進んだ。森の空気は少しずつ湿り気を帯び、やがて大きな泉が見えてくる。エイミーは泉の前で足を止めた。

「ここに、四獣の水龍さんがいるのです」
その言葉と同時に、泉の水面が大きく揺れた。水が渦を巻き、青い光と共に巨大な水龍が姿を現す。透き通る長い体と、深い湖のような瞳。水龍はエイミーたちを見下ろした。

「翠風の鹿を越えて来たか。ならば、我が試練も受けてもらおう」
水龍の水しぶきが4人に降りかかる。

エイミー「いきなり水浸しなのです…」
桜花が一歩前へ出る。
「水龍さん、力を貸して。大切な仲間を助けたいの」

水龍は静かに頷いた。
「ふむ…遠方より来るもの……少し試してやるか」

その瞬間、泉の水が溢れ出し、空中へ舞い上がった。水龍の道が出来ていく。
水龍はその奥に移動する。

さらに水龍は、大きな鯉を呼び出した。青と金に輝く鯉の背には、小さな水の宝石が乗っている。
「この鯉に宝石を渡した。奪って見せよ」

「つまり、あの鯉を捕まえれば良いのですね」
是音が重い鎧を外す。

だが、水龍は少し楽しそうに言った。
「力任せに追えば、決して届かぬ」

次の瞬間、鯉は尾を振り、空中の水流へ飛び込んだ。水の道を滑るように泳ぎ、あっという間に木々の間へ逃げていく。

「速いのです!」
エイミーが目を輝かせた。
すると、森のあちこちから獣たちが顔を出した。みんな鯉を見つけると、楽しそうに鳴き声を上げる。

「み、みんなもやるの?」
桜花が驚く。
「フォレスタの子たちは、遊びが大好きなのです!」
エイミーは嬉しそうに水流へ飛び込んだ。

桜花は動きやすいように軽装になり、木の枝へ飛び移る。是音も外衣を整え、刀には触れずに構えた。
「これは剣ではなく、身のこなしの勝負ですね」

「こうなったら、本気でいくわよ」
桜花も軽装になり戦闘モードに入る。

ハクも雰囲気に戸惑いつつやる気を出した。
「なんだこれ……本気なのか、、遊びなのか?」

「本気の遊びなのです!」
エイミーの声が水流の中から響いた。

桜花は枝を伝って、是音は水流の動きを見極める。エイミーは水の中を魚のように泳ぐ。小さな獣たちもそれぞれの動きで鯉を追い詰めていく。

エイミー達が一歩リードして鯉に近づく。

「右へ行ったわ!」
「いえ、上です!」
「エイミー、そっちだ!」

声を掛け合いながら、一行と獣たちは少しずつ鯉の逃げ道を塞いでいく。ついに鯉は泉の中央へ追い込まれた。だが、その瞬間、鯉は大きく跳ね、水龍の頭の上へ宝石を戻してしまう。

水龍は愉快そうに笑った。
「まだ終わりではないぞ」
次の瞬間、水龍の口から激しい水鉄砲が連続で放たれた。水の弾が空中を走り、エイミーたちの行く手を阻む。

「きゃっ!」
是音も水しぶきを受け、珍しく少しだけ目を丸くする。「これは……なかなか手荒いですね」エイミーも直撃してよろめく。

水龍の頭上には青い宝石が輝いている。だが、水鉄砲が激しく、普通には近づけない。
桜花はエイミーを見た。
「エイミー、飛べる?」
「飛ぶのです?」
是音が静かに頷く。
「私と桜花殿で、あなたを投げます。まっすぐ宝石へ」

エイミーの顔が青くなった。
「ななな!それは良くないです!!」
桜花と是音は水鉄砲を避けながら走り、同時にエイミーの手を取った。

「いくわよ!」
「参ります」
「えええええ!!!」

二人は力を合わせ、エイミーを空へ放り投げた。エイミーの小さな体が、水しぶきの中を一直線に飛ぶ。

「エイミー!そこよ!!」
その声に押されるように、エイミーは手を伸ばした。

「と…!取ったのです!」
エイミーの手が、水龍の頭の上に輝く青い宝石を掴んだ。

次の瞬間、空中の水流が光となって弾けた。水は雨のように降り注ぎ、森の草花を濡らしていく。エイミーは桜花と是音に受け止められ、三人はそのまま草の上に転がった。
一瞬の沈黙。
そして、桜花が笑った。続いてエイミーが笑い、ハクも声を出して笑った。是音も濡れた髪を払いながら、静かに微笑んでいる。森の獣たちも飛び跳ね、鳴き声を上げていた。

水龍はその様子を見つめ、穏やかに言った。
「争うのではない。遊ぶのだ」

ハクが顔を上げる。
「遊ぶ?」
水龍が応える。
「共に走り、共に考え、共に笑う。戦の中では忘れがちな、命の喜びだ」
桜花は青い宝石を見つめた。息は上がり、服も髪も濡れている。けれど、心は不思議と軽かった。
「……楽しかった」
是音も笑顔で頷く。

水龍は語る。
「それは水龍の石。黒き呪いに沈んだ心を洗い流す。持って行くがよい」
エイミーは宝石を大切そうに胸に抱いた。
「ありがとうなのです、水龍さん」

二つ目の四獣の力を手に入れた一行は、濡れた服を乾かしながら、次の四獣に会うため再び森の奥へと進んでいった
・前の話
・次の話
