第5章-1 錆びついた揺り籠

第5章-1 錆びついた揺り籠

鉄の墓場、エリアG-16。無機質な風が、錆びついた機械の塔の群れを冷たく撫でる。

「……ひどい場所」 ねねは小さく零した。100年前の華やかなステージとは対極にある、色彩を失った死の街。歩くたび、左足の義足が「カシュン」と無機質な音を立てる。それが、自分がかつて「罠」として封印された過去と、今や「機械の一部」になった現実を突きつけるようで、彼女は胸の奥をチリリと焼かれるような思いがした。

隣を歩くエイミーは、汚れなき白いワンピースを纏い、裸足で瓦礫を踏みしめていた。 「……地の声が、泣いています。鉄の錆と、消えない悲しみの匂い」 彼女の言葉は静かだが、その瞳には深い憂いが宿っている。この場所は、エイミーを愛し、守り抜いて死んだ「父(猫)」との、最期の記憶が眠る場所だった。

ねねの義足が、不意にドクンと脈打つ。 「っ……また、この子が」 「マスターキーが呼応しているのですね。エリアのシステムと」 エイミーの視線が、ねねの機械の足に注がれる。その眼差しは鋭く、そして悲しげだ。

ねねにとって、この足は「希望」を託された証。だが、機械に家族を奪われたエイミーにとって、それは「憎むべき同胞」の破片かもしれない。

「行きましょう、ねね。あなたが本当にこの地を救う主(マスター)なのか……見極めさせてください」 エイミーは、かつて父を奪った鋼鉄の咆哮を思い出しながら、一歩前へ進んだ。

ねねは、光り始めた義足を強く踏みしめる。 「……うん。もう、誰の罠にもならない。この足で、ちゃんと歩くって決めたから」

二人の少女は、それぞれの「悲しみ」を抱えたまま、巨大な沈黙を貫く要塞兵器、デスサイトの待つ深淵へと足を踏み入れた。