第5章-5 ギアーズ:G8

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第5章-5 ギアーズ:G8

G4との激戦を乗り越え、エリアG-16の深部へと進むねねとエイミー。張り詰めた空気の中、突如として地を這うような低い唸り声が響き渡った。

ズゥゥン……ズゥゥン……。

重厚な足音が近づいてくる。通路の奥から現れたのは、黄金色のたてがみを模した放熱フィンをなびかせ、鋭い牙と爪を備えた**巨大なライオン型の戦闘ロボット『G8』**だった。その威圧感は、先ほどのG4を遥かに凌駕している。

「百獣の王……。これが、次の『ギアーズ』なのですか……!」 「大きい……! でも、ここを通らないと先へは進めない!」

ねねが武器を構えると同時に、G8が咆哮した。その衝撃波だけで、周囲の壁に亀裂が走る。

「――GRRRRAAAAGH!」

G8の猛攻が始まった。その巨体からは想像もつかない俊敏さで、ねねたちを翻弄する。鋭い爪の連撃を、ねねは紙一重で回避し続けるが、反撃の隙が全くない。

「くっ……! 速すぎる!」

エイミーが援護の光弾を放つが、G8はそれをたてがみのフィンで容易く弾き飛ばす。

「私の攻撃が通じないのです!? この装甲、特殊なエネルギーフィールドで守られているのです!」

防戦一方の中、ついにG8の重い一撃がねねを捉えた。武器でガードしたものの、吹き飛ばされ、壁に激突する。

「がはっ……!」

あまりの衝撃に、ねねは肺の中の空気をすべて吐き出し、苦悶の叫び声を上げた。

「あァァァッ!!」

その悲痛な叫びが響いた瞬間――。 G8の動きが、ピタリと止まった。

それまで無慈悲な殺意の赤色に輝いていたG8の光学カメラの瞳が、一瞬だけ、チカチカと明滅する。そして、その色が、温かみのある琥珀色(こはくいろ)へと変化したのだ。

「え……?」

痛みに歪む視界の中で、ねねはその瞳を見た。 戦闘ロボットには似つかわしくない、どこか哀愁を帯びた、深く優しい色。

ドクン、とねねの心臓が大きく跳ねた。

(あの目の色……。私……見たことがある……?)

遠い記憶の彼方。幼い日の自分を見つめていた、温かい眼差し。それと全く同じ色を、なぜこの殺戮兵器が持っているのか。拭いきれない違和感と混乱が、ねねの思考を停止させる。

だが、戦場は感傷を許さない。G8が停止した隙を突き、別の方向から激しい銃撃音が轟いた。

「遅れてすまない! 加勢するぞ!」

現れたのは、別ルートから侵入していたレジスタンスの部隊、カタナとその仲間たちだった。彼らの放つ重火器の一斉射撃がG8に集中する。

「カタナさんたち!? 今よ、みんなで畳みかけて!」

ねねは混乱を振り払い、再び武器を握る。エイミーも支援体制に入り、カタナたちの攻撃に合わせてG8のフィールドを中和にかかる。

外部からの激しい攻撃に、G8の瞳の色が再び戦闘モードの赤に戻った。G8は怒り狂ったように咆哮し、隠されていた火器を展開し始める。ギアーズが、本気を出し始めたのだ。

「まずいのです! エネルギー反応が急上昇しているのです! 全員、回避を――!」

エイミーが警告を発した、その時だった。

――キィィィィィン。

耳をつんざくような高周波音が鳴り響き、空間そのものが歪んだように感じられた。 暴れ回っていたG8が、そして周囲の空気さえもが、凍り付いたように静止する。

「な、何……? 何が起きたの?」 「……いえ、違うのです。彼らは『止まった』のではないのです。『畏怖(いふ)』しているのです……!」

エイミーが震える声で呟く。 静寂の中、動かなくなったG8のスピーカーから、ノイズ混じりの重い機械音声が発せられた。

『――G16……、デスサイト……、降臨(こうりん)』

その言葉を合図にするように、エリアG-16の最深部、天井の巨大なハッチがゆっくりと開き始めた。 そこから降りてくる、底知れぬ絶望的な影。

狂った科学者が遺した最後の、そして最悪の遺産が、その姿を現そうとしていた。

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