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第8章-2 氷の女王ゼレア

戦士たちが歩み出した、その時だった。ゼレウスの城が、低く唸るように震えた。
吹雪の奥で、巨大な城門がゆっくりと開いていく。門の向こうから流れ出した冷気が、大地を白く染めていった。
誰が命じるでもなく五つの国の軍勢は同時に足を止めた。
圧倒的な戦力の圧。氷の魔法大国の軍勢の足音が響く。

騎士、魔法使い、エルフ、デーモン、氷の魔神。ゼレア女王に従う者たちが、吹雪の中に次々と並んでいく。
ゼレウスの軍そのものが、ひとつの魔法になっている。そんな異様な圧力が、戦場全体を包み込んでいた。

デーモンの将軍が先陣を切る。
「神聖な氷の地に踏み入ったこと、許さんぞ!」
その声は短く、重かった。

「今こそ我らがゼレウスの力を示す時!」
その怒号ともとれる咆哮が戦士達を奮い立たせる。
続いて、若きエルフ族の将が現れる。

5つの国の軍を前に微笑みを返す。
「この地はそんなに甘くないですよ。」

「エルフの知性に追いつけるかしら」
そのエルフの声に返すのは魔法使いの軍勢だった。
「あら、知性とは、、エルフさんは頭がよろしいようで。私にはそれすら必要ないの。だってみんな私に服従するから。」

魔法使いの軍勢は既に詠唱に入っている。
その瞬間、大地が大きく揺れた。
ゼレウス軍の奥から、巨大な影が進み出る。
普通の魔獣ではない。
魔神だった。ゼレアによって異界より呼び出された神と対をなす存在。
ゼレアが与えた氷の体にその魂が宿っている。

魔神1体が一国の戦闘力に匹敵するほどの戦闘力を秘めている。
ゼレアの魔力はそれを顕現させるほどの巨大な力だった。
唯一の主は、魔神に体を与えているゼレアのみ。女王を倒す以外に止める手段はない。

周囲をファントムが飛び回る。
死霊、戦で倒れた魂が再び戦う。永遠に戦い続ける存在が無数にゼレウスを守る。

ファントムの中には古代の王までも彷徨っていた。この地を守るためにゼレアによって操られている。

ゼレウスの軍を前に決意をする各国の戦士達。
ねねはゼレアの突き刺さるような魔力を受け止めつつも、奇妙な共鳴を感じた。
「魔神の召喚、、この能力、私の力『神々の召喚』と似てる。負けてられないわ!」

アカリと桜花が既に走り出していた。
「桜花、行こう!」
「はい!ネオライズのみんな、そして父上との約束を果たす時!」

オリジンだけは、笑っていた。
誰もが身構える中、彼だけが楽しそうにゼレウスの軍勢と巨大な魔力を眺めている。
黒の指輪がわずかに光を増した。
リリはそれに気づき、胸の奥に嫌な予感を覚える。
「オリジン様……?」
「素晴らしいな」
オリジンは、目を細めた。
「これほどの力とは、ゼレアを討つ。そして全てを支配する!」

オリジンの視線の先、そこには巨大な氷の魔神が進軍していた。
明らかに異質なオーラを纏っている。

女王ゼレア直属の魔神ブリザディオス。

その姿を見た瞬間、戦場から音が消えた。
誰かが息を呑む。
誰かが武器を握りしめる。
誰かが祈るように目を閉じる。

ゼレア女王。
覚醒大戦を引き起こし、世界中を戦火に巻き込んだ存在がその魔神の頭上に佇む。

戦場に向かって軽く息を吹きかけるゼレア。

それに呼応して巨大な冷気の魔法を放出する魔神。

ゼレウス軍の進軍を告げる狼煙が天に打ち上げられた。

戦場に走り出す戦士達の足音が地響きのように襲い掛かる。

それを見つめる仮面の戦士がいた。

ゼレアの弟、レオン。彼は常にゼレアの横にいた。
遠い昔の、まだ人の心を持っていた頃の姉を守るため、今も戦場に立っている。

今のゼレアは既に覚醒の力の代償として、氷の神そのものになっている。
昔の姉ではない。しかし、彼の中には子供のころのゼレアの笑顔が息づいていた。
あの日、幼い自分を守るために氷の神に魂を捧げた姉を救いたい。

世界を平和に戻し、姉を救う唯一の方法にレオンは賭けていた。
白の指輪の情報をねねに渡し、カタナの国の大将軍の怒龍に協力を仰ぐ。
もし、ゼレアが氷の神の力を抑え込むことが出来れば、、、。
今、その意思は紅姫の手の中に受け継がれていた。

紅姫はその役割を理解していた。
「この大き過ぎる魔力、、既に人ではない。ゼレア、、もし、氷の神を黙らせられぬのであれば、、、童と一緒に消えてもらう。」

戦士達の剣が重なり合う。ついに決戦が始まった。

「いざ、尋常に勝負」

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